2002.04.07. スコットランドの釣鐘草
No.5 The Bluebells of Scotland「スコットランドの釣鐘草」という曲を知っていますか?「蛍の光」や「アニーローリー」と同様に、かつて日本で紹介されて親しまれてきたスコットランド民謡で、原題は「The Bluebells of Scotland」です。前回書いたMickey Dohertyの末弟John Doherty(1895?-1980)のCD「TAISC」に、ずっと忘れていた、このメロディーが入っていたので懐かしくなりました。
 Johnは、このシンプルなメロディーの曲に、ダブル・ストップや分散和音のようなアドリヴ、様々な装飾音を交えながら、間にダンス・チューン
No.6 The Highlands of Scotlandを挟んで演奏しています。The Bluebells of Scotlandはダンス・チューンではなく、歌うように演奏するエアーの曲で、テンポも一定ではありませんが、リズミカルなマーチのThe Highlands of Scotlandとのつながりが自然で、かっこいいのです。晩年(1974年)の録音ですが、張りのある音色と、発想が豊かな、自由自在な、若々しい演奏で楽しませてくれます。とても80歳近い人の音とは思えません。
 今回載せた
The Bluebells of Scotlandの楽譜では、John Dohertyの演奏のほんの一部しか伝えられません。伝統音楽のすごい演奏の前では、楽譜は無力だなあと思います。でも一応載せました。アイリッシュ・フィドルに興味のある方は、ぜひ実際に、John DohertyのCDを聴いてみてください。

 追記(2002.04.08)
 
The Bluebells of Scotlandのダブル・ストップについて、ちょっと付け加えます。まず、どうやらJohn Dohertyはこの曲では、4弦(G弦)を一音上げてAにしているようです。で、この低いAの音を効果的に使って、和音を作り出しています。和音の付け方の一例を、楽譜上にで書いてみました。音符のそばので囲った数字は、1弦,2弦,3弦,4弦を表わします。あと、実際のフィドルの指板上での位置と指使いを図にしてみました。手描きなので、見づらいかもしれませんが。楽譜&図解

2002.03.08. Doherty 兄弟 その1〜Mickey Doherty〜
No.4 Nora Crionna :ダブリン在住の(ハンドルネーム)DustyMillarさんからのお薦めで、最近、Mickey Doherty(1894-1970)というフィドラーのテープを購入しました。50年以上も前、1949年の録音ですが、臨場感のある良い音です。Mickey Dohertyは、ドニゴール地方のフィドラーに大きな影響を与えたDoherty兄弟の一人です。
 このテープに入っているNora Crionnaというジグの曲が、ユニークでとても気に入ったので紹介します。Mickey Dohertyは、この曲をバグパイプが演奏しているような音で弾いています。Mickey Dohertyのお父さんは、フィドルとハイランドパイプを演奏したそうです(アイルランドのパイプといえばイーリアンパイプですが、地理的に、スコットランドの影響が強いドニゴールでは、ハイランドパイプが一般的だったようです)。Mickeyは、身近に聴いていた、パイプの独特の装飾音とドローンの音を真似してみたくなったのでしょうか。
 彼が演奏するNora Crionnaは、メロディーに様々な装飾音を付け、ドローンの音を一緒に弾き続けるというものです。ドローンの音は、普通のチューニングでは4弦(G)の2フレットにあたる一番低いAです。ただ、メロディーを弾くのは殆ど2弦なので(ちょっとだけ1弦も弾く)、ドローンは、たぶん、3弦(D)を低いAまで下げて弾いていると思います。実際に、このチューニングで弾いてみると、ドローンの音は、弦がかなり緩んでいるので音が長く残り、バグパイプっぽい感じになります。
 ドニゴールのフィドラーの演奏には、このようなバグパイプをイメージさせるようなものが時々あります。Mickey Dohertyの影響でしょうか。興味深いです。 

2001.11.14. マウレ山荘
No.3 The Butterfly
:先日、HARD TO FINDの演奏で行った丸瀬布町で、とてもいい温泉に入ってきました。丸瀬布の中心部から車で15分位山道を行くと、突然現われる新しくて大きな温泉ホテル「マウレ山荘」です。今年の春に出来たばかりの町の自慢の施設だそうです。何しろ素晴しいのは温泉の質です。ほとんど無色無臭でさっぱりしているのに、すごく温まります。1日に何度も入りたくなるようなお湯でした。
 丸瀬布には縁があって何度も行っています。林業の盛んな山あいの町です。町のシンボルは蝶です。
 次の日は、北見のライブハウス「夕焼けまつり」で、Grass of Erinとジョイントライブ。はHARD TO FINDとGrass of Erinの共通のレパートリーButterflyなどを、一緒に演奏して盛り上がりました。
 今回の
Butterflyは、友人のちょびくんの気になる曲でした。
*The Butterflyが聴けるCD : The Bothy Bandのファーストアルバム、HARD TO FINDのPaparl'n Night 。また、インターネットで、オーストラリアのポチーンというグループの音を聴くことが出来ます。

2001.6.8. 名曲
No.2
unknown
去年、NHKテレビで、今まであまり語られることのなかった、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)とアイルランドとの関わりをテーマにした番組をやっていました(この春、再放送していました)。案内役の佐野史郎が、ハーンゆかりの地を訪ねて歩く、興味深い番組でした。ハーンが孤独な少年時代を過ごしたアイルランドへの、屈折した望郷の念が心に残りました。有名な、のっぺらぼうの話「狢(むじな)」には、ハーンが幼いころアイルランドで体験したことが折り込まれているんだそうです。で、この番組で流れていた、美しい曲がありました。どこかで聴いたことがあるような、懐かしさを感じるメロディーでした。
 先日、ジョセフィンさんが、アイルランドを舞台にした名画「静かなる男」のビデオを貸してくれました。なんと、その中にも、この曲が使われていたのです。もし、この曲のタイトルをご存じの方がいらっしゃいましたら、教えてください。 

 追記(2001.11.1)
 この曲について、いろいろ情報を寄せていただきました。松阪さん、前川さん、しろうくん、ありがとうございました。
この曲は、日本の唱歌「
春の日の花と輝く」(訳詞:堀内敬三)として親しまれている歌でした。美しい歌詞がついています。やっぱり、子どもの頃にでも聴いたことがあったのかなあ。
 原題は「
Believe me,if all those endearing young charms」、ハーバード大学の学生歌としても有名な曲だそうです。もともとはアイルランドの曲ですが、本国ではあまり歌われていないということです。
 それにしても、アイルランドの血を引いた小泉八雲の「怪談」と、アイルランドの曲に美しい日本語の詞をのせた「春の日の花と輝く」には何か通じるものを感じます。あの番組に、この曲を選んだ人、素晴しいですね。

2001.5.27. 金の指輪 
No.1 The Gold Ring : 昔、ある男が、金の指輪と引き替えに妖精から教わった、と言い伝えられている曲だそうです。長い、難しい曲です。なかなか覚えられません。さすが、妖精の曲。
 5月19日、滝川市で、The Suffering GaelsとダンスのNiall o' Leary Irish Dance Troupeの公演を観ました。音楽もダンスも堪能できて、とても良い公演でした。6人編成のダンスチームは、華やかで素晴らしかったです。中でも印象的だったのが、デイル・ラスの素晴しいフィドル ソロ。そのとき弾いていたのがこの曲です。